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AGA物語

頬も首筋も、酒でも飲んだみたいにうす赤く染まっている。伸びっぱなしの髪は額に張り付き、玉のような汗がびっしりと浮いていた。

 空気が変わった、と男はそう思った。

 理由はない。ただそう感じただけだった。

 男の胸が少年のように高鳴った。表情にみるみる闘志が漲る。

 駅の通路の曲がり角から、白く細い手が幾重にも絡まって伸び、それが踊っているのだ。

手にしたミラーレスがいままで聞いたことのないピープー音を響かせ始めた。妖気に当てられたこいつはもう使い物にならない。

男はそれを乱暴にかなぐり捨て、黒い革リュックからアナクロな一眼レフを取り出し胸に構えた。

 彼女が来た。

 角に設置された三角鏡に、白い着物の女がうごめいていた。

 男は闇を睨み上げると、シャッターボタンに指をかけて颯爽と走りだした。 AGAだ
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